価値観タイムライン

世代で異なる「仕事へのモチベーション」の価値観:背景を知り、相互理解を深めるヒント

Tags: 世代間ギャップ, 仕事, モチベーション, 価値観, 働き方, 相互理解

はじめに

職場において、若い世代の方々との間で「何を目標に仕事をしているのだろうか」「なぜ、かつてのようにがむしゃらに働こうとしないのだろうか」といった疑問を感じることはありませんでしょうか。あるいは、「自分の若い頃はこうだったのに」と感じつつも、その経験や考え方をどのように伝えれば良いのか戸惑うこともあるかもしれません。

このような感覚は、世代間で異なる「仕事へのモチベーション」の価値観に起因することが少なくありません。本稿では、世代ごとに異なる仕事へのモチベーションの捉え方について、その背景にある時代背景とともに解説し、世代間の相互理解を深めるためのヒントを探ります。

世代ごとの仕事へのモチベーションに見られる傾向と時代背景

世代ごとの価値観は、その世代が育った経済状況、社会環境、技術発展など、様々な時代背景によって形成されます。仕事へのモチベーションについても同様に、それぞれの世代が経験した社会の空気や規範が深く影響しています。

例えば、経済成長期を経験した、あるいはその価値観を強く受け継いだ世代にとって、仕事は「生活を豊かにするための手段」であり、「会社への貢献を通じて昇進し、安定した地位を築くこと」が主要なモチベーションとなりやすかったと言えます。終身雇用や年功序列が一般的であった時代においては、組織への忠誠心や長時間働くことへの評価が高く、「会社のために尽くすこと」そのものが大きな意義を持つ場合もありました。

一方で、バブル崩壊後の「失われた時代」や、IT技術の急速な発展、グローバル化、そして近年では予測不能な社会変化(パンデミックなど)を経験してきた若い世代にとって、仕事を取り巻く環境は大きく変化しました。終身雇用や年功序列は必ずしも保証されなくなり、会社に頼り切ることへのリスクを感じる機会が増えました。

このような時代背景のもと、若い世代の間では、仕事へのモチベーションの源泉が多様化している傾向が見られます。

もちろん、これらの傾向はすべての若い世代に当てはまるわけではなく、世代内にも多様な価値観を持つ人々が存在します。しかし、経済や社会構造の変化が、仕事に対する根源的な考え方に影響を与えていることは理解しておく必要があるでしょう。

世代間ギャップを乗り越え、相互理解を深めるために

世代間で仕事へのモチベーションの捉え方が異なると、職場でのコミュニケーションや評価においてすれ違いが生じやすくなります。相互理解を深めるためには、以下のようなアプローチが考えられます。

  1. 相手の価値観の背景に関心を持つ: なぜそのように考えるのか、どのような経験や社会状況がその価値観を形成したのかに思いを馳せてみましょう。一方的に「理解できない」と決めつけるのではなく、相手の視点に立とうとする姿勢が大切です。
  2. 対話を通じて「知る」努力をする: 若い世代が仕事に対してどのような期待や目標を持っているのか、率直に尋ねてみることから始めましょう。頭ごなしに否定せず、「なぜ、そう考えるの?」と問いかけることで、新たな発見があるかもしれません。彼らが大切にしている「やりがい」や「成長」といった言葉の意味を、具体的なエピソードを通じて理解しようと努めることが重要です。
  3. 「違い」を認め、「共通点」を探す: 価値観の違いはあって当然です。その違いを否定するのではなく、一つの個性として受け止め、尊重する姿勢を示しましょう。その上で、仕事における「成果を出すこと」「チームで協力すること」といった共通の目標や価値を見出し、そこを基盤に関係性を築いていくことが有効です。
  4. 自身の経験を「事実」と「解釈」に分けて伝える: これまで培ってきた経験や知見は、若い世代にとって貴重な財産となり得ます。しかし、それを伝える際には、「自分の頃はこうすれば成功できた」「これが正しい働き方だ」というように、特定の価値観や成功体験を押し付ける形にならないよう注意が必要です。「あの時はこのような状況で、私は〇〇と考え、△△という行動をとった。その結果が□□だった」というように、具体的な事実に基づいた情報として提供することを心がけましょう。そして、その経験から何を学び、どのような価値観を持つようになったのかを、自身の「解釈」として丁寧に伝えることで、相手はそれを一つの参考情報として受け止めやすくなります。

まとめ

世代によって仕事へのモチベーションの源泉や働く目的が異なるのは、それぞれが異なる時代背景を生きてきた自然な結果です。かつての「会社のための貢献」や「昇進・安定」といった価値観だけでなく、現在の若い世代が重視する「自己成長」「やりがい」「ワークライフバランス」といった多様な価値観にも目を向けることで、彼らの行動や考え方を深く理解することができます。

相互理解のためには、相手の価値観の背景を知ろうとする探求心と、対話を通じて歩み寄ろうとする姿勢が不可欠です。自身の豊富な経験を伝える際も、特定の価値観の押し付けではなく、事実に基づいた情報提供を心がけることで、若い世代はそれをより建設的に受け止め、自身の働き方や目標設定の参考にすることができるでしょう。

世代間の価値観の違いを、対立の原因として捉えるのではなく、互いを理解し、組織全体の多様性と可能性を広げる機会として捉えていくことが、これからの時代においてより重要になるのではないでしょうか。